ごあいさつ
主任教授ごあいさつ
これからの放射線医学のために
兵庫医科大学放射線医学教室 主任教授 山門亨一郎
2017年4月から5代目の主任教授としてとして教室を主宰することになりました。
放射線医学は病院の屋台骨です。現代医学は、放射線医学なくしてあり得ません。X線写真や、CT、MRI、超音波やPET検査などの最新の画像検査は、ハイテク医学の代表でもあります。体内を精密に調べることができる素晴らしい進歩です。このような画像診断は急速に発展しています。石藏、安藤両准教授は神経放射線や小児放射線の専門家で、日本でもトップクラスの知識、診断能力を有しており、学会や研究会でも大変活躍しています。山野講師は乳腺や子宮卵巣といった女性画像に加え、泌尿器領域の専門家で各科から大変頼りにされています。
ごく微量の放射線をだしている薬(ラジオアイソトープ)を注射して体内での目印として用い、病気の診断をする核医学も重要な診断の武器です。特にPET検査では、がんを鋭敏に見つけることができるため、がん診療には欠かせないものとなっています。また、ラジオアイソトープを癌に集中して集めることで、がん治療にも用いることができます。甲状腺がんや前立腺がん、リンパ腫、転移性骨腫瘍といった様々な悪性腫瘍に対して有効なラジオアイソトープが開発されています。北島一宏准教授が精力的に核医学を牽引してくれています。
画像診断を利用してリアルタイムな画像下に体内にカテーテルなどを入れ、腫瘍や動脈瘤、血管狭窄などを治療するインターベンショナル・ラディオロジー(Interventional Radiology, IVRと略します)と呼ばれる画像下治療も急速に発展しています。当科では第3代主任教授の中尾宣夫名誉教授、第4代の廣田省三名誉教授ともIVRを専門としてきました。中尾名誉教授は肝癌に対する動脈塞栓術の大家でありましたし、廣田名誉教授は門脈圧亢進症に対するIVRや肺動静脈奇形に対する塞栓術の世界的な権威でした。私の専門分野もIVRです。手術や抗癌剤で治療ができなかったり、治療効果がなかったり、再発してしまったがんをラジオ波治療で治療することができます。肺がん、肝臓がん、腎臓がん、副腎腫瘍、骨軟部腫瘍、などが対象疾患です。多くの癌患者さんが県内外から治療を受けに来られ、ラジオ波治療の恩恵を受けています。このラジオ波治療は、悪性腫瘍だけではなく、原発性アルドステロン症などの良性腫瘍に対しても有効です。私に加え、講師の小林、高木、助教の加古を中心にIVRを行っています。最近は、子宮筋腫に対する塞栓術は手術とほぼ同等の結果が得られることがわかってきました。塞栓術を受けられる子宮筋腫の患者さんも増加しています。
放射線治療は今やがん治療の太い柱です。がん対策基本法が制定され、さらにがんプロフェッショナル養成プランに取り組むなど当院も、がん治療のレベル向上と充実に向けて取り組んでいます。上紺屋教授と富士原講師を中心にIMRなど最新治療に精力的に取り組み、阪神地区の中核病院として高い評価を得ています。
放射線医学は、欧米では外科、内科と並ぶ三大メジャー科のひとつです。ハイテク機器を駆使して全身の検索をし、治療を行っています。これからも、高いレベルの放射線診療を行い、若い放射線科医を育て、放射線医学の研究を通じて国民の健康を守るために頑張りたいと存じます。