DEPARTMENT OF RADIOLOGY, HYOGO COLLEGE OF MEDICINE

IVR

IVR(Interventional Radiology)・インターべンショナルラジオロジーとは

画像ガイド下(X線透視、CT、超音波など)にカテーテルや穿刺針などを用い、病気の診断だけでなく治療も行うものです。本邦では「IVR」または「画像下治療」と呼ばれ、治療の柱の一つとして普及しています。

IVRはVascular IVR(血管系)とnon- vascular IVR(非血管系)に大別されます。前者は血管狭窄あるいは閉塞に対する血管形成術(PTA)、動脈瘤や静脈瘤、動静脈奇形の塞栓術、外傷や腫瘍などによる出血に対する止血目的での血管塞栓、悪性腫瘍に対する動注化学療法あるいは化学塞栓術(TACE)、局所動注化学療法のためのリザーバー・カテーテルシステムの留置や門脈圧亢進症における経頚静脈肝内門脈―静脈短絡造設(TIPS)、脾機能亢進症に対する部分的脾動脈塞栓術など様々な臓器や病態が適応となります。
後者では血管以外の部位(胆管や尿管などの管腔臓器や、膿瘍腔や嚢胞などの病変内など)を画像ガイド下に直接穿刺しドレナージやステント留置などを行う手技や、悪性腫瘍に対する治療法として、経皮的直達治療(経皮的腫瘍内エタノール注入(PEIT)、ラジオ波焼灼療法(RFA))があります。

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当院で施行可能なIVRの紹介

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肩・膝・関節症に対するカテーテル治療

運動器カテーテル治療とは

鎮痛薬内服、ヒアルロン酸注射、理学療法等を行っても、慢性的に膝・肩・肘に痛みがある患者さんが対象となる治療です。ただし骨の変形が強いなど、整形外科的に手術適応がある患者さんは含まれず、レントゲンでは異常がほとんどないが痛みだけがある方が良い適応となります。また局所に感染がある方、動脈硬化の強い方、脳梗塞後後遺症、関節リウマチ、帯状疱疹後疼痛、感染症、悪性新生物を 有する方や未成年は適応となりません。この治療は保険診療ではなく、自費診療ですので入院中の手技や検査、処方の全てが自費診療となりますことを御理解下さい。ただし当院は大学病院であり、経験豊富な放射線科と整形外科それぞれの専門医が綿密に連携し、質の高い治療を提供できる利点があります。

治療方法

局所麻酔で行い、約1時間で治療できます。足の付け根や肘、手などの血管にカテーテルという細い管を挿入します。動脈という血管にカテーテルを挿入し、造影剤を使用して疼痛部の血管を撮影します。疼痛部に異常な血管(モヤモヤ血管)が見られたらチエナム®という抗生物質を塞栓物質として注入し、モヤモヤ血管を塞栓します。塞栓後にモヤモヤ血管が消えたことを確認し、挿入したカテーテルを抜去後約10分間圧迫止血します。治療終了後は病室で数時間安静にして頂き、翌日診察後に退院となります。飲食は直後から可能です。

治療効果

この治療により有効な治療成績が過去に報告されています。膝関節痛では1年後に約8割程度痛みが軽減し、鎮痛剤の内服をしている患者が8割以上も減少しています。肩関節痛では2年後でも約9割程度痛みが軽減しています。肘関節痛でも2年後に約8割程度痛みが軽減しています。このように疼痛軽減には非常に有効であり、疼痛軽減により経時的な関節可動域の増加も報告されています。また下記のごとく治療に伴う合併症はほぼありませんので、軽いトレーニングであれば治療後数日後から、負荷の強いトレーニングでも数週間後から再開出来るのも大きな利点です。

合併症

この治療に伴う合併症は、カテーテル挿入に伴う局所の血管トラブルのみで、軽微なもののみです。強いて合併症を挙げるとすれば血管造影検査(カテーテル挿入+造影注入)に伴う合併症が考えられます。血管造影検査の合併症は非常にまれ(3%未満)ですが、以下のような合併症が生じる可能性があります。時に致死的となります(1%未満)。

  • 造影剤やその他の薬剤によるアレルギー(呼吸困難、ショック、心停止など)や腎不全
  • 迷走神経反射などによる嘔気、嘔吐、徐脈、血圧低下
  • 血管穿刺部の出血、血腫、動脈瘤形成、感染
  • 血管損傷(動脈解離、穿孔)
  • 脳、腸管、上下肢などの動脈塞栓症(血栓、動脈硬化片遊離、動脈解離による)。具体的には、脳梗塞、消化管壊死・消化管潰瘍、手指・足趾の壊死、臓器不全などの虚血症状や重篤な炎症(胆嚢炎、膵炎など)
  • 肺塞栓症(深部静脈血栓が肺動脈に詰まって生じる、呼吸困難やショック、心停止などの症状)
  • 脊髄神経・末梢神経障害(神経枝の造影、動脈塞栓症、カテーテルや血腫による神経圧迫)
  • 皮膚潰瘍、蕁麻疹、その他(テープかぶれや皮膚炎)

参考文献

#1. Y. Okuno et al, Cardiovasc Intervent Radiol (2015)38:336-343
#2. W. Iwamoto et al, J Shoulder Elbow Surg (2017)26, 1335-1341
#3. Y. Okuno et al, J Shoulder Elbow Surg (2014)23, e199-e206

子宮筋腫に対する動脈塞栓術(UAE)

子宮動脈塞栓術とは?

子宮筋腫の動脈塞栓術とは、カテーテルという細い管を血管(動脈)の中に挿入し、子宮筋腫の栄養血管を塞栓物質により閉塞させる治療法です。子宮動脈の塞栓術により、過多月経・貧血、疼痛、腹部膨満感等、子宮筋腫に伴う様々な症状は、大半の患者さんで改善します。また、局所麻酔で施行可能であり負担が軽く、細いカテーテルを使用した治療なのでほとんど傷が残らず、子宮を温存することができるという利点があります。子宮動脈塞栓術は、平成26年3月より保険認可され、現在、保険診療で治療を行うことができます。

子宮動脈塞栓術の治療方法

子宮動脈塞栓術は、放射線科が血管造影室で行う治療法です。患者さんには、血管造影装置の上で仰向けに寝ていただきます。患者さんの足の付け根を消毒したのち、局所麻酔を行います。皮膚に3-5mmの切開を加えたのちに、18ゲージ(約1mm)の針で大腿動脈を穿刺します。この針を通してガイドワイヤーを動脈の中に進め、さらにカテーテルという細い管に入れ替えて、子宮筋腫を栄養する動脈にカテーテルを進めていきます。
一旦、動脈の中にカテーテルが入ったら、あとはX線透視画像を見ながら処置を進めていきます。画像を見ながらカテーテルを子宮筋腫を栄養する動脈(通常は子宮動脈)まですすめて行きます。目的とする血管にうまくカテーテルが入っているかどうかは、適宜、造影剤という薬剤を血管から注入して確認します。
目的の血管にカテーテルが入ったら、血管を閉塞させるための薬剤(塞栓物質)を注入し、血管を閉塞させます。子宮動脈は通常は左右1本ずつあるため、両側の子宮動脈を閉塞させます。
子宮動脈塞栓術の治療時間は、通常60-90分です。術後は、足の付け根に入っていたカテーテルを抜去し、約10分間圧迫止血します。さらに、カテーテルの入っていた場所を圧迫用テープでしっかり固定して、病室に帰っていただきます。カテーテルが入っていた場所からの再出血を防ぐため、病室でも3-4時間は足を動かさずに安静にしていただきます。その後は圧迫テープを緩め、少し足を動かしても再出血しないことを確認しながら、徐々に動いていただきます。通常、子宮動脈塞栓術後翌朝には、自由に動いていただくことができます。
子宮動脈塞栓術後、発熱や痛みが出る場合があるため、通常は術後数日間は入院していただいています。患者さんの希望に応じ、できるだけ早めに退院していただくことも可能です。

子宮動脈塞栓術の治療効果

米国IVR学会が中心となって行ったアンケート調査では、子宮動脈塞栓術の手技成功率(両側の子宮動脈を塞栓できた割合)は96%と報告されています(Strokesら、QI guideline for UAE、JVIR 2005)。当院でも、これまでに子宮動脈塞栓術が施行されたすべての患者さんで、手技は成功しています。 また、子宮動脈塞栓術後の症状改善率は、腹部圧迫症状の改善:88-92%、不正性器出血の改善:90%以上、その他の症状の改善:75%と報告されており、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。このため、患者さんの満足度も高く、米国のアンケート調査では、子宮動脈塞栓術を友人にも勧めたいという患者さんが80-90%であったと報告されています(Strokesら、QI guideline for UAE、JVIR 2005)。
ただし、一旦改善した症状が、再度出現する場合もあります。このような場合でも、できるだけ負担が少なく繰り返し治療できることが、子宮動脈塞栓術の利点です。
挙児希望の患者さんにも本治療をお勧めすべきかどうかは、まだ一定の見解が得られていません。欧米のデータでは、子宮動脈塞栓術後に挙児を希望し、実際に妊娠できた頻度は60-73%と報告されています(Maraら、CVIR 2008;Walkerら、Am J Obstet Gynecol 2006)。一方、子宮動脈塞栓術後に妊娠した患者さんのうち、自然流産した割合は23-60%と報告されています。したがって、挙児希望の患者さんの場合、妊娠はできるかもしれませんが、流産の頻度が高くなる可能性があります。

子宮動脈塞栓術の合併症

子宮動脈塞栓術に関連して起こる合併症として、以下のようなものが報告されています。永久無月経:0-3%(45歳未満)、20-40%(45歳以上)、帯下:2-17%、筋腫の経膣排出:3-15%、感染・敗血症:1-3%、深部静脈血栓・肺塞栓症:1%未満、標的部以外の塞栓::1%未満(Strokesら、QI guideline for UAE、JVIR 2005)。子宮動脈塞栓術後30日以内の死亡率は0.0048%(12/25000)と報告されています。

子宮動脈塞栓術は局所麻酔下・経皮的に施行可能であり、通常の子宮摘出術と比べ合併症の頻度が低く、程度も軽いことが報告されています。

肝癌に対する動脈塞栓術(TACE)・ラジオ波治療(RFA)・動注化学療法

肝癌に対するIVR治療としては肝動脈塞栓術(TACE)、ラジオ波凝固治療(RFA)、動注化学療法などがあります。これは肝臓の障害度(肝予備能)、腫瘍の大きさや個数などにより最も良い治療法が選択されます。またこれらを組み合わせて治療することもあり、当科では多数の治療を古くから行っています。
肝癌診療ガイドラインはこちら

肝動脈化学塞栓術(Transcatheter hepatic arterial chemoembolization:TACE)とは?

主に肝細胞癌に対して我が国を中心に進歩したカテーテル治療で、肝細胞癌の栄養動脈となる肝動脈を選択的に塞栓することで腫瘍を壊死させる方法。適応として、腫瘍が富血管性であることが重要となります。大きさや数に関する制限はありませんが、門脈本幹や一次分枝レベルで腫瘍栓による閉塞がみられる場合は、TACEを行うと肝実質の広範な虚血性壊死をきたすため禁忌となります。また肝予備能が不良な場合は複数回に分けて施行したり、亜区域や亜々区域に選択的にカテーテルを挿入し小範囲のTACEに留めたりすることが必要です。以上から良い適応となるのは肝機能がChild AまたはBの進行肝癌(手術不能で、かつ経皮的焼灼療法の適応とならないもの)です。塞栓の際には、油性造影剤であるリピオドール(イオダイズドオイル)が腫瘍内に蓄積する作用を利用し、種々の抗癌剤と混和して投与する方法や最近では球状塞栓物質(ビーズ)を使用したTACEも盛んにおこなわれています。

肝動脈化学塞栓術の治療方法

肝動脈化学塞栓術は、放射線科が血管造影室で行う治療法です。患者さんには、血管造影装置の上で仰向けに寝ていただきます。患者さんの足の付け根を消毒したのち、局所麻酔を行います。皮膚に3-5mmの切開を加えたのちに、18ゲージ(約1mm)の針で大腿動脈を穿刺します。この針を通してガイドワイヤーを動脈の中に進め、さらにカテーテルという細い管に入れ替えて、肝癌を栄養する動脈にカテーテルを進めていきます。
一旦、動脈の中にカテーテルが入ったら、あとはX線透視画像を見ながら処置を進めていきます。画像を見ながらカテーテルを肝癌を栄養する動脈(通常は肝動脈)まですすめて行きます。目的とする血管にうまくカテーテルが入っているかどうかは、適宜、造影剤という薬剤を血管から注入して確認します。
目的の血管にカテーテルが入ったら、油性造影剤であるリピオドール(イオダイズドオイル)とエピルビシンやシスプラチン等の抗癌剤を混和液を注入し、血管を閉塞させるためのゼラチンスポンジ(塞栓物質)を注入し、血管を閉塞させます。肝癌を栄養する血管が複数本であれば、複数の血管から治療することもあります。
肝動脈化学塞栓術の治療時間は、通常90-120分です。術後は、足の付け根に入っていたカテーテルを抜去し、約10分間圧迫止血します。さらに、カテーテルの入っていた場所を圧迫用テープでしっかり固定して、病室に帰っていただきます。カテーテルが入っていた場所からの再出血を防ぐため、病室でも3-4時間は足を動かさずに安静にしていただきます。その後は圧迫テープを緩め、少し足を動かしても再出血しないことを確認しながら、徐々に動いていただきます。通常、肝動脈化学塞栓術後翌朝には、自由に動いていただくことができます。
肝動脈化学塞栓術後、発熱や痛みが出る場合があり、一時的に肝機能が低下するため、通常は術後約1-2週間程度入院していただいています。

肝動脈化学塞栓術の治療効果

2000~2005 年の 4,966 症例の検討が行われた論文(Takayasuら、Superselective transarterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma. Validation of treatment algorithm proposed by Japanese guidelines. J Hepatol 2012)では、5年生存率は 34% とされており、以前までの報告と比べ向上しています。

肝臓の左葉に肝癌を認め、治療直後の画像で薬の良好な集積を認めます。2ヶ月後には薬の良好な集積を保ったまま、腫瘍部は縮小しており、治療効果良好です。

肝動脈化学塞栓術の合併症

肝動脈化学塞栓術に関連して起こる副作用・合併症として、以下のようなものが報告されています。頻度が高いが軽症なものとしては、発熱、疼痛、嘔気、嘔吐、迷走神経反射など。頻度としては稀なものの重篤なものとしては、ショック、心肺停止、静脈血栓症、肺塞栓、呼吸不全、腫瘍破裂による腹腔内出血、塞栓物質の逸脱などがあります。患部・臓器症状としては、肝機能障害、肝不全、腎機能障害、腎不全、胆管障害、消化器障害(消化管潰瘍など)、神経障害(脳梗塞、脊髄梗塞、末梢神経障害など)、感染・炎症(肝膿瘍、胆嚢炎、胆管炎、膵炎、膀胱炎など)、皮膚症状(腫脹、疼痛、発赤、潰瘍、壊死、皮下出血、色素沈着など)があります。

ラジオ波焼灼療法(Radiofrequency ablation therapy:RFA)とは?

ラジオ波焼灼療法は局所凝固療法の一つで、腫瘍に直接電極針を穿刺し、ラジオ波電流を流し腫瘍を焼灼する治療で、肝がん治療に広く用いられています。当院では肝がんだけでなく転移性肺がんや腎がん、骨軟部悪性腫瘍に対しても積極的に施行しています。

局所凝固療法(local ablation therapy)とは?

局所凝固療法とは、腫瘍を直接穿刺しアルコールや熱により腫瘍細胞を凝固壊死させる治療の総称で、本邦では主に肝癌に対し経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy: PEIT)、マイクロ波凝固療法(microwave coagulation therapy: MCT)、ラジオ波焼灼療法(Radiofrequency ablation therapy: RFA)などが施行されています。このうち現在では、一回の焼灼範囲が大きいRFAが主流となっています。
RFA・凍結療法研究会のHPはこちら
※旧RFA談話会(英名:Japan Image-guided Ablation Group) 代表世話人:兵庫医科大学放射線科 山門亨一郎

ラジオ波凝固治療(RFA)は、ラジオ波電極針を直接腫瘍に刺しいれて電磁波の一種であるラジオ波を流すことにより、腫瘍に60~100℃の熱を与えて凝固壊死させる治療法です。本邦では肝臓がんに対する標準的治療として広く施行されており、その安全性や有効性が確立されています。兵庫医科大学放射線科では、悪性肺腫瘍(原発性肺がん、転移性肺がん)に対してもラジオ波治療を行っており、良好な治療成績が得られています。肺腫瘍に対するラジオ波治療は現在、施行できる施設が限られています。このため、兵庫医科大学放射線科では、全国より広く患者さんを受け入れています。

肝ラジオ波治療の合併症

非常にまれですが、以下のような合併症が生じる可能性があります。時に致死的となります。(死亡率0.2%)その他の副作用・合併症としては、発熱、出血、嘔気、嘔吐、除脈、血圧低下、腹痛、肝機能障害、肝不全、腹水、肝膿瘍、胆管炎、胆嚢炎、腸管穿孔、気胸、ショックなどがあります。

肝ラジオ波治療の治療効果

RFA の3 年生存率は63~74%と報告(Cho YK. Hepatology 2009;49(2):453-9.)されています。またRFA にTACE を先行することで焼灼範囲が拡大し、治療回数や局所再発の減少に寄与するとされています。

肝動注化学療法(Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy :HAIC)とは?

肝細胞癌や転移性肝癌に対して行われる治療で、カテーテルという管とポート(リザーバー)という容器を接続したシステムを体内に留置し、癌の栄養動脈となる肝動脈から直接高濃度の抗癌剤を注入する方法です。肝臓に直接高濃度の抗癌剤を注入出来、全身化学療法と比べると副作用が軽い利点があります。対象は肝細胞癌の患者さんで門脈腫瘍栓等があり、肝動脈化学塞栓術が行えない患者さんや転移性肝癌に対する全身化学療法で副作用が強く出て全身化学療法が出来ない方や全身化学療法で効果がなかった患者さんなどです。入院で治療する場合と外来で治療する場合がありますが、初回はシステムを体内に留置するため必ず入院で行います。

肝動注化学療法の合併症

血管塞栓術の項目に加えて、創部の出血、感染、疼痛、皮膚潰瘍を生じる可能性があり、ポートの抜去や創部の皮膚治療が必要となることがあります。また感染が生じたり、カテーテル内が閉塞、システムが自然に移動し目的とした血管に薬を注入出来ない場合などは、カテーテルとポートのシステムを抜去することがあります。

肝動注化学療法の治療効果

がん診療ガイドラインでは、肝動注化学療法は予後を改善する可能性はあるが十分な科学的根拠がない(グレードC1)とされています。明確な科学的根拠がない治療法にはなりますが、古くから行われています。肝細胞癌の患者さんに対して、インターフェロン・シスプラチン併用肝動注群で生存期間中央値が延長したという報告(Chung YH. Cancer 2000;88(9):1986-91.)等があります。また大腸癌肝転移でその他に転移がない患者さんに対する動注化学療法の成績として、1年、2年、3年、4年、5年生存率はそれぞれ97%、68%、25%、15%、5%という報告(Arai Y. Proc ASCO 1998; 17: 285a)などがあります。
がん診療ガイドラインはこちら

肺腫瘍に対するラジオ波治療(RFA)

ラジオ波凝固治療(RFA)は、ラジオ波電極針を直接腫瘍に刺しいれて電磁波の一種であるラジオ波を流すことにより、腫瘍に60~100℃の熱を与えて凝固壊死させる治療法です。本邦では肝臓がんに対する標準的治療として広く施行されており、その安全性や有効性が確立されています。兵庫医科大学放射線科では、悪性肺腫瘍(原発性肺がん、転移性肺がん)に対してもラジオ波治療を行っており、良好な治療成績が得られています。肺腫瘍に対するラジオ波治療は現在、施行できる施設が限られています。このため、兵庫医科大学放射線科では、全国より広く患者さんを受け入れています。

肺ラジオ波治療の方法

肺腫瘍に対するラジオ波治療は、局所麻酔下に、CTガイド下に施行します。患者さんには、CT装置の上に寝ていただき、まずCTを撮影します。撮影したCT画像を参考に、電極針の種類や針を刺す部位を決定します。電極針を刺す部位を消毒したのち、局所麻酔を行います。皮膚に3-5mmの切開を加えたのち、CT透視画像を見ながら病変部までラジオ波電極針を進めていきます。この際にもちいるCT透視はリアルタイムでCT画像を確認することができる最新システムであり、ミリ単位の正確さで病変部に電極針を刺しいれることができます。電極針を腫瘍に刺しいれたのち、ラジオ波発生装置より電磁波を流します。この際に痛みがあれば、適宜、痛み止めを追加します。電磁波を流す時間は腫瘍の大きさや場所によって異なりますが、通常は5-10分程度です。その後、再度CTを撮影し、治療範囲や合併症の有無を確認します。
 肺腫瘍に対するラジオ波治療の治療時間は、通常1時間です。治療後は翌日まで安静にしていただき、レントゲンや血液検査で問題ないことを確認したのち、徐々に動いていただきます。その後も2-3日は入院していただき、レントゲン撮影等を行い、遅発性合併症がないか確認します。退院後は1週間後に外来受診していただき、再度、遅発性合併症がないか確認します。

肺ラジオ波治療の成績

原発性肺癌(非小細胞癌、Stage I)に対するラジオ波治療の成績は、局所再発率:25-44%、総生存率は3年36-83%、5年19-27%と報告されています。これらの結果は、標準的治療である外科的切除に比べるとやや不良ですが、これはラジオ波治療を受けられる患者さんは各種併存疾患や高齢等の理由で手術ができない方が多いことが理由の一つと考えられています。同じ背景因子をもつ患者さんで手術(区域切除)とラジオ波治療を比較した場合には、同等の治療成績であったという報告がなされています(Kwanら、JVIR2014)。

転移性肺腫瘍に対してもラジオ波治療は有効で、大腸癌、乳癌、腎癌、肝癌など、様々な悪性腫瘍からの転移に対して治療を行うことができます。特に、ラジオ波治療は繰り返し行うことができるという利点がありますので、両肺に複数の転移がある患者さんでも、治療を数回に分割することで、ラジオ波治療ができる場合があります。大腸癌肺転移に対するラジオ波治療の成績は、局所再発率:14-38%、生存期間中央値:33-26ヵ月と報告されており、全身化学療法単独と比べ良好な成績が報告されています。全身化学療法と併用しながらサイズの大きな病変はラジオ波で治療する、あるいは、手術とラジオ波を組み合わせて治療する、といった様々な治療戦略ができる場合があります。

肺ラジオ波治療の合併症

肺ラジオ波治療後、追加処置や入院期間延長が必要となるような大きな合併症の発生頻度は、約10%と報告されています(Kashima, Yamakadoら、AJR2011)。大きな合併症の内訳として、無菌性胸膜炎(2.3%)、肺炎(1.8%)、肺膿瘍(1.6%)、輸血を要する出血(1.6%)、気管支胸膜瘻(0.4%)、神経損傷(0.3%)、腫瘍播種(0.1%)、横隔膜ヘルニア(0.1%)などが報告されています。
また、軽度の合併症としては気胸(44.5%)、皮下気腫(9.3%)、血痰(6.0%)などがあります。特に気胸は頻度の高い合併症であり、このうち約半数の患者さんで胸腔ドレーン留置が必要となります。

腎・副腎腫瘍に対するラジオ波治療(RFA)

ラジオ波凝固治療(RFA)は、ラジオ波電極針を直接腫瘍に刺しいれて電磁波の一種であるラジオ波を流すことにより、腫瘍に60~100℃の熱を与えて凝固壊死させる治療法です。本邦では肝臓がんに対する標準的治療として広く施行されており、その安全性や有効性が確立されています。兵庫医科大学放射線科では、腎腫瘍(腎癌など)や副腎腫瘍(悪性副腎腫瘍、ホルモン産生副腎腺腫など)に対してもラジオ波治療を行っており、良好な治療成績が得られています。腎・副腎腫瘍に対するラジオ波治療は現在、施行できる施設が限られています。このため、兵庫医科大学放射線科では、全国より広く患者さんを受け入れています。

腎・副腎腫瘍に対するラジオ波治療の方法

腎・副腎腫瘍に対するラジオ波治療は、局所麻酔下に、CTガイド下に施行します。患者さんには、CT装置の上に寝ていただき、まずCTを撮影します。撮影したCT画像を参考に、電極針の種類や針を刺す部位を決定します。電極針を刺す部位を消毒したのち、局所麻酔を行います。皮膚に3-5mmの切開を加えたのち、CT透視画像を見ながら病変部までラジオ波電極針を進めていきます。この際にもちいるCT透視はリアルタイムでCT画像を確認することができる最新システムであり、ミリ単位の正確さで病変部に電極針を刺しいれることができます。電極針を腫瘍に刺しいれたのち、ラジオ波発生装置より電磁波を流します。この際に痛みがあれば、適宜、痛み止めを追加します。電磁波を流す時間は腫瘍の大きさや場所によって異なりますが、通常は5-10分程度です。その後、再度CTを撮影し、治療範囲や合併症の有無を確認します。
腎・副腎腫瘍に対するラジオ波治療の治療時間は、通常1-2時間です。治療後は翌日まで安静にしていただき、レントゲンや血液検査で問題ないことを確認したのち、徐々に動いていただきます。その後も2-3日は入院していただき、血液検査やレントゲン撮影等を行い、遅発性合併症がないか確認します。退院後は1週間後に外来受診していただき、再度、遅発性合併症がないか確認します。
なお、腎臓に対しては2022年9月から保険適用になりましたが、副腎に対しては自費診療(約35万円)となりますので、ご注意ください。

腎癌に対するラジオ波治療の成績

腎癌に対するラジオ波治療の成績は、4cm以下の腎癌(T1a)の場合の腎癌関連5年生存率は100%で、従来の腎摘除術や腎部分切除術といった外科治療と同等の治療成績が報告されています(Takaki, Yamakadoら、JJR 2012)。更に、外科治療と比べて腎機能に与える影響が少ないため、腎機能を保ちながら治療することが可能です。

腎臓は血流豊富な臓器であり、従来は4cmを超える腎癌はラジオ波治療の効果が低いとされていました。一方、兵庫医科大学ではスイッチングコントローラーという新しいラジオ波治療装置を導入しており、最大3本までのラジオ波電極針を用いて治療を行うことができるため、4-7cmの大型腎癌(T1b)に対しても手術と同等の治療成績が得られています(Takaki, Yamakadoら、Radiology 2015)。

副腎腫瘍に対する対するラジオ波治療の成績

副腎腫瘍に対しても、ラジオ波治療は有効です。我々は2007年に、クッシング症候群を呈する副腎腺腫4例に対してRFAを施行し、全例で症状の改善が得られたことを報告しました(Arima, Yamakadoら、Urology 2007)。また、2011年にMendiratta-Lalaらは、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、テストステロン分泌腫瘍といった機能性副腎腫瘍計13例に対してラジオ波治療を行い、全例で症状の改善が得られたことを報告しています。
転移性副腎腫瘍に対してもラジオ波治療は有効です。我々は2005年~2014年までの間に、35例の副腎転移症例に対してラジオ波治療を行いました(Haegawa, Yamakadoら、Radiology 2015)。このうち33例(94%)では画像上、副腎転移を完全に治療することができました。また、27例(77%)では、その後も副腎転移の再発は認められませんでした。

骨・軟部腫瘍に対するラジオ波治療(RFA)

ラジオ波凝固治療(RFA)は、ラジオ波電極針を直接腫瘍に刺しいれて電磁波の一種であるラジオ波を流すことにより、腫瘍に60~100℃の熱を与えて凝固壊死させる治療法です。本邦では肝臓がんに対する標準的治療として広く施行されており、その安全性や有効性が確立されています。兵庫医科大学放射線科では、骨・軟部腫瘍に対してもラジオ波治療を行っており、良好な治療成績が得られています。骨・軟部腫瘍に対するラジオ波治療は現在、施行できる施設が限られています。このため、兵庫医科大学放射線科では、全国より広く患者さんを受け入れています。

骨・軟部腫瘍に対するラジオ波治療の方法

骨・軟部腫瘍に対するラジオ波治療は通常、局所麻酔下に、CTガイド下に施行します。患者さんには、CT装置の上に寝ていただき、まずCTを撮影します。撮影したCT画像を参考に、電極針の種類や針を刺す部位を決定します。電極針を刺す部位を消毒したのち、局所麻酔を行います。皮膚に3-5mmの切開を加えたのち、CT透視画像を見ながら病変部までラジオ波電極針を進めていきます。この際にもちいるCT透視はリアルタイムでCT画像を確認することができる最新システムであり、ミリ単位の正確さで病変部に電極針を刺しいれることができます。電極針を腫瘍に刺しいれたのち、ラジオ波発生装置より電磁波を流します。この際に痛みがあれば、適宜、痛み止めを追加します。電磁波を流す時間は腫瘍の大きさや場所によって異なりますが、通常は5-10分程度です。その後、再度CTを撮影し、治療範囲や合併症の有無を確認します。
骨・軟部腫瘍に対するラジオ波治療の治療時間は、通常1-2時間です。治療後は翌日まで安静にしていただき、レントゲンや血液検査で問題ないことを確認したのち、徐々に動いていただきます。その後も2-3日は入院していただき、遅発性合併症がないか確認します。退院後は1週間後に外来受診していただき、再度、遅発性合併症がないか確認します。

転移性骨腫瘍に対するラジオ波治療

骨は、悪性腫瘍が転移しやすい部位の一つであり、特に乳癌・前立腺癌・腎癌・甲状腺癌・肺癌では、骨転移を伴う頻度が高いと言われています。骨転移は脊椎・肋骨・骨盤骨に好発し、痛みを伴うことが多いです。また、骨転移が進行すると、病的骨折、脊髄神経圧迫症状、高カルシウム血症等をきたす場合があります。
疼痛を伴う悪性骨腫瘍は、ラジオ波治療の良い適応であり、90~100%の患者さんでラジオ波治療後に除痛効果が得られたことが報告されています(Nakatsuka, Yamakadoら、JVIR 2004)。また、有痛性骨転移に対する治療として従来、放射線治療が行われてきましたが、放射線治療の最大除痛効果発現時期は照射後12-20週後と時間がかかります。また、放射線治療では照射できる放射線量の上限があるため、繰り返す治療が難しいことがあります。一方、ラジオ波治療では治療後数日以内(多くは翌日)には除痛効果が得られ、繰り返す治療が可能ですので、放射線治療と比べて治療効果の即効性に優れていると言えます。また、過去に放射線治療を受けた部位や、今後放射線治療を加える予定の部位にもラジオ波治療を行うことができます。兵庫医科大学では、放射線科IVR部門、放射線治療部門、そして整形外科が協力しながら、転移性骨腫瘍をもつ患者さんにより良い治療を提供できるよう心がけています。

類骨骨腫に対するラジオ波治療

疼痛を伴う良性骨腫瘍にもラジオ波治療は効果的であり、そのうち最もよく治療されているのが類骨骨腫です。類骨骨腫は、小児や若年成人の長管骨に好発する良性骨腫瘍で、局所の疼痛や腫脹を伴い、疼痛は夜間に増強することが特徴とされています。従来は病変部の外科的切除が標準的治療とされていましたが、1992年のRosenthalらが低侵襲で安全な治療として類骨骨腫に対するラジオ波治療を報告し、その後、世界中で広く行われるようになりました。
類骨骨腫のラジオ波治療は、放射線科と整形外科、および麻酔下の共同作業で行い、特に小児の場合は全身麻酔で行っています。患者さんにCT台の上に寝ていただき、麻酔をかけた後に、整形外科医が病変部に到達するような細い穴をあけます。そして、放射線科医がラジオ波用電極針を細い穴を通して病変部まですすめ、ラジオ波治療を行います。ラジオ波治療自体は数分で終わり、治療後にCTを撮影して合併症がないことを確認したのちに、手技を終了します。
治療終了後、早ければ24時間以内に疼痛は消失します。また、遅くとも1週間以内には、ほとんどの患者さんで疼痛が消失します。一方、治療後1ヵ月以上経過しても疼痛が改善しない場合は、治療効果不良と判断し、再治療を行う場合があります。類骨骨腫に対するラジオ波治療の初回治療成功率は76-95%と報告されており(Cantwellら、AJR 2006)、初回治療効果が不十分でも追加治療を行うことによりほとんどの患者さんで症状の改善が得られます。

その他の骨・軟部腫瘍に対するラジオ波治療

その他の骨・軟部腫瘍に対してもラジオ波治療が有効な場合があります。治療効果が期待できるかどうかは、個々の患者さんの病状や病変部位により異なりますので、ご相談があればお気軽に兵庫医科大学放射線科(IVR外来)を受診してください。

腹部内臓動脈瘤に対する血管内治療(塞栓術、ステント留置術)

腹部の内臓動脈瘤は、比較的まれな動脈瘤であり、頻度は0.1-2%と言われています。なかでも高齢者や門脈圧亢進症患者(肝臓が悪い患者)ではやや多いとされています。また、近年の画像診断の進歩により偶発的に発見される症例が増えています。病因としては、生まれつき動脈壁が弱いあるいは一部が欠損している先天性と高血圧、タバコ、糖尿病、高コレステロール血症など動脈硬化による後天性があります。一般的にサイズが大きくなる(多くは20mmを超える)か、正常径の2倍以上を超えると破裂の危険性があるため、何らかの治療の対象になるといわれています。また、増大傾向のある動脈瘤やサイズが小さくても破裂の危険性が高いと判断される場合は治療の適応になります。部位別頻度は、脾動脈が60%と最も多く、他には腎動脈・肝動脈・腹腔動脈・上腸間膜動脈・胃十二指腸動脈などに動脈瘤ができます。動脈瘤の治療は、これまで手術による外科的治療が一般的でしたが、身体への負担が大きいため、手術が出来ないこともあります。そこで、近年、カテーテルを用いて切らずに動脈瘤を治療する方法(塞栓術やステント留置術など→血管内治療やインターベンショナルラジオロジー:IVRと呼ばれます)が行われています。

塞栓術、ステント留置術の方法

腹部内臓動脈瘤に対する塞栓術やステント留置術は、急性総合医療センター1階にあるIVRセンター(血管撮影室)で行います。足の付け根の皮膚を局所麻酔したのち、細い針で大腿動脈を穿刺します。この針の中にガイドワイヤーを動脈の中に進め、X線透視下にガイドワイヤーに沿わせてカテーテル(検査用の細い管)を入れていきます。術前に撮影された造影CTやMRIの画像を参考にして、カテーテルが目的とする血管に到達したら、造影剤を使って血管を撮影します。動脈瘤の形態やサイズなどによって塞栓物質や塞栓方法が異なります。
塞栓術が終了すれば、足の付け根に入っていたカテーテルを抜去して、止血のため10分間圧迫します。その後、圧迫固定用のテープで固定し、病室に戻ります。通常は6時間程度ベッド上で安静にしていただきます。止血が確認できましたら、安静を解除して術前同様に自由に歩くことが出来ます。治療後、数日以内に造影CTやMRIで効果判定を行います。
通常3日~7日間程度の入院期間が一般的ですが、合併症の程度により前後します。

症例1(腎動脈瘤)

動脈瘤を金属コイルで充填、ステントを留置して腎動脈への血流を温存しています。

症例2(脾動脈瘤)

動脈瘤の前後の血管を金属コイルで充填しています。

塞栓術、ステント留置術の成績

腹部内臓動脈瘤は、比較的稀な疾患であるため、多数例の治療成績はほとんどありません。2005年~2016年にかけて報告された22の研究をまとめた報告(646個の腹部内臓動脈瘤を対象)では、技術的成功率は93.2%とされており高い成功率となっています(Hong Kuan KokらJVIR2016)。 動脈瘤の治療後は、10%程度で再開通が生ずるとされ、追加治療を要する割合も4.6%と報告されています。

塞栓術、ステント留置術の合併症

大きな合併症の発生頻度は、3.5%と報告されていますが、治療対象となる動脈瘤の発生部位によって異なります。

また、発生部位にかかわらず、手技中には動脈解離や動脈瘤破裂、塞栓物質の逸脱なども生ずることがあります。

静脈瘤・門脈圧亢進症に対するカテーテル治療

慢性肝炎や肝硬変によって生じる門脈圧亢進症に対するカテーテル治療、特に胃静脈瘤に対するバルーン下逆行性静脈瘤塞栓術(Balloon‐occluded Retrograde Transvenous Obliteration:B-RTO)と呼ばれるカテーテルを使った治療は、国内でも屈指の症例数を重ね、優れた治療効果を得ています。
それ以外にも部分脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)、経頚静脈的肝内門脈大循環シャント形成術(Transjuglar Intrahepatic Portosystemic Shunt:TIPS)、経皮経肝静脈瘤塞栓術(percutaneous transhepatic obliteration of varices:PTO)などの治療も症例に応じ行っています。
門脈圧亢進症は食道静脈瘤、胃静脈瘤、異所性静脈瘤など多彩な側副路の形成に止まらず、門脈圧亢進症性胃症(PHG)、シャント性肝性脳症、脾機能亢進症、脾動脈瘤など多くの病態を合併することから、その診断・治療は非常に重要となります。

TIPSとは?

TIPSとは門脈圧の減圧を目的とし、右頚静脈穿刺にて専用デバイスを挿入し、肝静脈から肝内門脈枝を穿刺し、バルーンカテーテルで短絡路を拡張した後に金属ステントを留置し、大循環系のシャント路を作成する手技のことをさします。 TIPSは難治性食道静脈瘤、(胃静脈瘤)、難治性腹水、門脈圧亢進症性胃腸症などの疾患が適応となります。

B-RTOとは?

B-RTOとは、経静脈的にカテーテルから行う胃静脈瘤の硬化療法のことです。胃静脈瘤の血行動態は、短胃静脈、後胃静脈系が供血路となり、下横隔静脈から副腎静脈に排血するルート(GRシャント)で形成され、この経路にカテーテルを進め塞栓する治療法のことです。適応は①破裂の既往または破裂の危険のある胃静脈瘤で、胃腎シャント(gastrorenal shunt:GR shunt)または下大静脈に直接注ぐ下横隔静脈が排血路になっているもの、②これらのシャントが原因で肝性脳症をきたしている症例となります。また内視鏡からみた適応としては、Lg-fがB-RTOの最も良い適応ですが、Lg-cfも適応となります。それ以外にも十二指腸静脈瘤や腸管膜静脈瘤などの門脈圧亢進症に起因する静脈瘤性のシャントに対し、排血路にカテーテルを挿入できれば適応となります。 また肝性脳症の原因となる拡張した静脈(門脈大循環短絡)に対しても行うことがあります。
方法は足の付け根(大腿部)あるいは頚部(内頸静脈)から静脈にカテーテルを挿入し、拡張した静脈(静脈瘤の出口)内にカテーテルの先についているバルーン(小さい風船状のもの)を留置します。バルーンを膨らませた状態(血流遮断下)で、静脈瘤内に硬化剤(EOI:オルダミン®に非イオン性造影剤を加えたもの)を注入し血栓化させます。バルーンを留置したまま、通常翌朝まで(12-30時間)安静が必要です。BRTOの翌日に再度血管造影を行って静脈瘤全体が血栓化しているかどうかを確認し、もし不十分であった場合には、引き続いて硬化剤を追加注入します。 硬化剤(EOI)使用時には溶血性腎不全を予防するためにハプトグロビン®を使用することがあります。
硬化剤(オルダミン®)の使用量には限度(通常は0.4mL/kg 以内)がありますので静脈瘤本体以外の細かい側副路には20-50%ブドウ糖液、エタノールなどの血管を閉塞させる薬剤や金属コイルという血管を塞ぐ器材を併用することがあります。
胃静脈瘤の著明な縮小、消失を95%以上に認め、再出血率は5%以下です。
合併症としては以下のようなものが挙がります。

  • 頻度としては高いものの、軽症のもの:硬化剤使用時の血尿、エタノール使用時の注入直後の疼痛、など。
  • 頻度としては稀なものの、重篤なもの:腎不全、肺水腫、肺塞栓、ショック、硬化剤によるアレルギー反応、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血胸、肝不全、静脈塞栓症、金属コイルの移動、門脈血栓症(腸間膜静脈や傍臍静脈を塞栓する場合は頻度が高くなります)、腹水貯留、など。
  • 患部、臓器症状:吐き気などの一過性の消化器症状、腹痛、発熱、腹部膨満など。長期的には食道静脈瘤などの増悪を認めることが約25-40%でみられます。

PTO、PTSとは?

経皮経肝的静脈瘤塞栓術(PTO)、経皮経肝的硬化療法(PTS)はBRTOが困難な静脈瘤、拡張した静脈(門脈大循環短絡)、食道胃静脈瘤以外の消化管静脈瘤(直腸静脈瘤、ストマ静脈瘤など)に対する治療法です。BRTO手技と同時に行う場合もあります。
方法は超音波検査(US)をしながら局所麻酔下に肝臓を穿刺し、カテーテルを門脈内に挿入します。門脈と連続する静脈瘤の入り口近くまでカテーテルを進め、金属コイルや液体塞栓物質(エタノール、EOI、NBCAなど)を使用し、塞栓や硬化をします。
合併症としては以下のようなものが挙がります。

  • 頻度としては高いものの、軽症のもの:胆管穿刺、静脈穿刺、動脈穿刺、被膜下血腫、腹腔内出血、など。
  • 頻度としては稀なものの、重篤なもの:門脈血栓、肺塞栓など。

PTSの場合は、使用する薬剤によりBRTOの項目の副作用や合併症が生じることがあります。

PSEとは?

PSEは脾機能亢進症や門脈圧亢進症の治療の一つとして広く行われている治療法です。 方法は、足の付け根(大腿部)に局所麻酔をし、カテーテルを挿入します。そのカテーテルを脾動脈まで誘導し、脾動脈をゼラチンスポンジや金属コイルを用いて部分的に塞栓します。これにより、脾摘と同等の効果を得ることができます。適応は①脾機能亢進症、②門脈圧亢進症に対する補助療法、③静脈瘤止血目的、④インターフェロン治療における補助療法などが挙げられます。 血小板は術後1-4週間後に一過性に上昇し、その後漸減することが多いですが、血小板減少が再発する場合は再度PSEを行うこともあります。また脾臓が著明に腫大している巨脾の場合ははじめから複数回に分けて治療することもあります。 合併症としては以下のようなものが挙がります。

  • 頻度としては高いものの、軽症のもの:発熱、疼痛、嘔気、嘔吐、迷走神経反射、胸水、腹水など。
  • 頻度としては稀なものの、重篤なもの:心肺停止、静脈血栓症、肺塞栓、呼吸不全、塞栓物質の逸脱など
  • 患部、臓器症状:肝機能障害、肝不全、腎不全、腎機能低下、無気肺、肺炎、膵炎、胃潰瘍、イレウス、脾膿瘍、門脈内血栓、肝梗塞、脾破裂、播種性血管内凝固症候群(DIC)、脾動脈穿孔、腹膜炎など。

圧迫骨折に対する骨セメント注入術(経皮的椎体形成術)

経皮的椎体形成術とは?

骨粗鬆症に伴う良性の椎体圧迫骨折や転移性脊椎腫瘍などの腫瘍性病変による疼痛緩和目的に行います。局所麻酔を行い、X線透視装置やCT装置を用いて画像誘導下に背中から対象に針を挿入し、骨セメントを注入します。これにより多くの患者さんは疼痛が当日から数日以内に改善します。ただし腫瘍性圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術は、平成23年1月より保険認可されており保険診療で行えますが、骨粗鬆症性圧迫骨折に対しては、保険認可されておらず自費診療となります。

経皮的椎体形成術の治療方法

経皮的椎体形成術は、放射線科が血管造影室で行う治療法です。患者さんには、血管造影装置の上でうつ伏せに寝ていただきます。患者さんの腰背部を消毒したのち、局所麻酔を行います。皮膚に3-5mmの切開を加えたのちに、X線透視装置やCT装置を用いて画像誘導下に11ゲージ(約3mm)の針を穿刺し、椎体内に挿入します。この針から骨セメントを注入します。手技終了前にCTを撮影し、骨セメントの分布の確認と合併症の有無を確認します。
子宮動脈塞栓術の治療時間は、通常60-90分です。術後は数時間から翌日まで安静が必要となります。通常、術後翌朝から動いていただくことができます。 治療効果は約70-80%の患者さんで疼痛の改善が得られます。

経皮的椎体形成術の合併症

経皮的椎体形成術に関連して起こる合併症として、以下のようなものが報告されています。針の穿刺に伴う出血、血種、脊髄損傷、神経根損傷、骨セメント注入による疼痛悪化、末梢神経障害、脊髄障害、肋骨骨折、肺塞栓症、心停止など。また術後に新規圧迫骨折を約12-37%で起こるとされており、その半数以上は3ヶ月以内に隣接椎体に生じると報告されています。

その他のIVR

内臓動脈瘤に対する動脈塞栓術

動脈瘤とは血管が部分的に膨隆したもので、一般には限局性の中膜欠損部位が膨隆して生じるといわれています。形状によって嚢状や紡錘状に分けられます。腹部内臓動脈瘤は比較的まれな疾患ですが、画像診断機器の進歩に伴い偶然に発見される機会が多くなってきており、また破裂すると死に至る確率が高い(25%~75%)ため対応を迫られる疾患です。成因については動脈硬化、門脈圧亢進症、妊娠によるものや、外傷や術後合併症に起因する仮性動脈瘤など多様で、部位別に挙げると脾動脈瘤がもっとも頻度が高く(60%)、続いて固有肝動脈瘤(20%)、上腸間膜動脈瘤(5.5%)、腹腔動脈瘤(4%)の順となります。一般的には真性動脈瘤では2cm以上のものを治療適応としている施設が多く、また仮性瘤では小さなものでも絶対適応となります。治療法は経カテーテル塞栓術(TAE)と手術療法とに大別されるが、最近では手術に比べ低侵襲なTAEが第一選択となることが多くなっています。

CVポート(静脈ポート)埋め込み術

CVポート(静脈ポート)とは、心臓の近くの太い静脈に留置した中心静脈カテーテルと皮下に埋め込んだポートという器具を連結させ、中心静脈へ栄養や薬剤を簡胆に注入できるようにする新しい点滴システムです。ポートは直径2cm程度の大きさで、ここに注射針を刺して点滴治療を行います。
静脈ポートを用いれば、腕や手首の静脈からの通常の点滴では注入しにくい高カロリー点滴や抗がん剤を注入することができます。もちろん中心静脈カテーテルだけでもこれらの点滴治療は可能ですが、カテーテルが詰まらないようにするために、常時、点滴を続けなければなりません。また、カテーテルが体外に出たままの状態ですので日常の行動が制限され、入浴もできません。静脈ポートを留置すれば、点滴治療をしない時間には、ポートから注射針を外して通常の生活ができます。高カロリー輸液は在宅で行い、抗がん剤治療は外来で行うことも可能です。 CVポート(静脈ポート)の留置は、保険診療で受けることができます。

CTガイド下生検

生検とは、病変の診断を行うために、生検針という細い針を直接刺しいれ、組織の一部を採取する検査です。組織を直接採取するため、多くの場合、確定診断を行うことができます。当科では、より安全かつ確実に生検を行うために、CT画像を確認しながら生検を行うCTガイド下生検を施行しています。
CTガイド下生検は通常、局所麻酔下に行います。患者さんにCT検査台に寝ていただき、病変の位置に合わせて仰向けやうつ伏せの体位をとっていただき、CT画像を撮影します。CTで生検針の穿刺角度や深さを確認したのちに、CTガイド下生検を行います。生検針を進める際も適宜、針や病変の位置を確認しながら行うため、安全かつ確実な生検が可能となります。一度の生検で得られる組織は少ないため、通常、数回の生検を連続で行います。生検後、再度CTを撮影し、合併症がないか確認したのち、病室へ帰室していただきます。CTガイド下生検は通常、1泊2日の入院で施行可能です。

経皮経肝的門脈塞栓術(PTPE)

透析シャント不全に対する血管形成術

血管内異物除去術

膿瘍ドレナージ

上記以外にも様々なIVR手技が施行可能です。ご不明の点があれば当科外来までお問い合わせください。